NASに影響するMicrosoftの最新アップデート
Microsoftは最近、SMB(Server Message Block)プロトコルを利用したWindowsシステムとストレージ機器(特にNAS:ネットワーク接続ストレージ)の接続に関わる重要な変更を行いました。その結果、NASに保存されたファイルへアクセスできない、接続が不安定になるといった問題が発生しているケースがあります。これらの不具合は、今回のアップデートによる影響である可能性があります。
この記事では、NASユーザーやストレージ管理者が今知っておくべきポイントをわかりやすく解説します。
何が変わったのか?
- SMB署名がデフォルトで必須に – SMB署名とは、パソコンとNAS間でやり取りされるデータが改ざんされていないことを保証するセキュリティ機能です。今回の変更により、SMB署名がデフォルトで必須となりました。これにより、不正なユーザーが通信を傍受してデータを改ざんすることを防ぎ、機密情報を守るための重要なセキュリティ対策が強化されます。SMB署名の必須化についての解説動画はこちらをご覧ください。
- ゲスト接続が無効に – 「ゲスト接続」は、ユーザー名やパスワードなしでNASにアクセスできる便利な機能ですが、重大なセキュリティリスクを伴います。今回のアップデートでは、このゲスト接続機能が無効化されました。ゲスト接続を許可していると、悪意のあるサーバーに知らずに接続してしまい、データを盗まれたり、ランサムウェアを仕込まれたりする危険性があります。ゲスト認証の終焉について詳しくはこちらをご覧ください。
なぜこのような変更が行われたのか?
これまでNASベンダーの多くは、セキュリティよりもアクセスのしやすさを優先してきました。特に、ユーザーが簡単にファイルにアクセスできるよう、ゲスト接続を許可する設計が一般的でした。しかしこのアプローチは、サイバー攻撃に対して脆弱な状態を生み出していたのも事実です。近年、サイバーセキュリティへの関心と重要性が高まる中で、Microsoftはすべてのユーザーにとってより安全なデータ環境を実現するため、これらの変更を行いました。
ユーザーに与える影響
起こりうる問題
- 無効な署名(Invalid Signature)エラー – NAS側でSMB署名が強制されていない場合、Windowsからアクセスしようとすると「署名が無効です(invalid signature)」というエラーが表示されることがあります。
- アクセスエラー – NASがゲスト接続を前提としている場合、「パスが見つかりません」または「セキュリティポリシーによりブロックされました」のようなエラーが発生することがあります。
解決策
Microsoftでは、データの安全性を確保し、接続トラブルを解消するために、以下の対応を推奨しています:
- NASでSMB署名を有効にする –お使いのNASがSMB署名に対応しているか確認し、対応していれば署名機能を有効化してください。
- ゲストアクセスを無効にする –NASの設定で、ユーザー名やパスワードなしでの接続を禁止するよう設定しましょう。
- ユーザー名とパスワードによる認証を必須にする – すべてのユーザーに対して、認証を求める設定にすることで、不正アクセスを防ぎます。
- NASのファームウェアを更新し、最新の状態にする – 上記の1〜3がうまくいかない場合は、NASメーカーの公式サイトから最新のファームウェアをインストールしてください。
- NASの買い替えを検討する – もし現在のNASがこれらのセキュリティ機能に対応していない場合は、対応可能な新しい機種への買い替えも選択肢となります。
- Windows側でSMBクライアント署名を無効にする – これはセキュリティが低下するため推奨されませんが、NASがSMB署名に対応しておらず、買い替えも難しい場合の一時的な対応策として検討できます。(脆弱性のリスクがあることにご注意ください。)
- Windowsで安全でないゲストログオンを有効にする –これは最も安全性が低い方法であり、最後の手段としてのみ使用してください。
メーカーの皆様へ
NASやルーター機器を製造するメーカーは、ユーザーのセキュリティを最優先に考える姿勢が、今強く求められています。そのためには、SMBプロトコルの専門企業と連携し、ユーザーの業務や操作性を損なうことなくSMB署名に対応できる製品設計を行うことが重要です。
(※詳細は導入事例「デジタルホームにおけるデータ転送とNAS」をご覧ください。)
このような取り組みによって、メーカーは自社の信頼性を高めるとともに、顧客のセキュリティを重視している姿勢を明確に示すことが可能です。
Visuality Systemsは、SMBの複雑さに対応するために設計されたポータブルなソフトウェアライブラリ(YNQ など)を幅広く提供する、SMBプロトコルに特化した企業です。最新のセキュリティ要件に準拠しながら、シームレスな統合の実現をお手伝いいたします。
まとめ
NASへのアクセスを回復するために、これらのセキュリティ機能を無効にすることも技術的には可能です。しかし、その場合はシステムが攻撃に対して脆弱になることを忘れてはいけません。私たちはMicrosoftと同様に、これらのセキュリティ機能を有効に保つことを強く推奨します。それが、大切なデータを守る最善の方法です。
もし引き続き問題が発生する場合は、お使いのNAS機器の詳細を Microsoft([email protected])までお知らせください。
また、製品のセキュリティ強化を検討中の方や、NASやルーターのメーカー様は、SMBプロトコルの専門家である Visuality Systems へのご相談をおすすめします。
現代のデジタル社会において、データ保護は極めて重要な課題です。今回のMicrosoftによるアップデートは、ユーザーの情報を安全に守るために設計されたものです。
Visuality Systemsと提携することで、ストレージ機器メーカーは新しいセキュリティ要件に的確かつ効率的に対応し、ユーザーに最高レベルのセキュリティと安心感を提供することが可能になります。
Lilia Wasserman, VP R&D, Visuality Systems
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