Windows Server環境におけるセキュリティ強化を目的とした戦略的な取り組みとして、MicrosoftはSMB over QUICサーバー機能の大幅な拡張を発表しました。
この重要なアップデートは、Windows Server Insider Preview Build 25997 にて導入されており、これによりDatacenter Edition および Standard Edition でも SMB over QUIC が利用可能となります。これにより、ファイルサーバー接続の在り方に大きな変革がもたらされます。
この大きな転換は、これまで SMB over QUIC が Windows Server 2022 の Azure Edition のみに限定されていた制約からの脱却を示すものであり、あらゆる組織構成の管理者に対して、QUICがもたらす高度なセキュリティと柔軟性を活用したネットワークファイル共有の強化を可能にします。
SMB over QUIC:セキュアな接続の再定義
SMB(Server Message Block)は、長年にわたりファイル共有プロトコルの中核を担い、デバイス間のスムーズな通信を支えてきました。一方、QUIC(Quick UDP Internet Connections)は、Googleによって開発された新しい通信プロトコルで、従来のTCP(Transmission Control Protocol)モデルを覆す存在です。
QUICはUDP(User Datagram Protocol)上で動作し、アプリケーションレベルでの接続性とセキュリティの両面を大きく向上させています。
QUICの導入により、以下のような革新的な機能が実現されました:
- 高速な接続確立 – 1回のハンドシェイクで接続が完了し、遅延を大幅に削減
- 完全な暗号化通信 – TLS 1.3 により、すべてのパケットが暗号化(まるで組み込み型VPN)
- 賢いパケットロス処理 – 独自ヘッダーにより、信頼性の高いパケット再送制御を実現
- 接続の移動に対応 – IP/ポートやネットワークが切り替わってもセッションの維持が可能
- 高度な輻輳制御 – 1つの接続内で複数のデータストリームを同時処理
- 強化された再接続 – セッションチケットにより高速な再接続が可能
SMB over QUIC は、これまで主流だったTCPやRDMAプロトコルに代わる次世代のファイル共有手段として注目されています。特にインターネットなどの信頼できないネットワーク上でも、安全な接続を確保できる点が大きな特長です。
すべてのSMB通信はQUICトンネル内で暗号化されて送受信されるため、外部ネットワークに対する情報漏えいリスクを最小限に抑えることができます。
なお、SMB over QUICを有効化するには、IT管理者による明示的な設定が必要です。さらにMicrosoftは、Client Access Control(クライアントアクセス制御)という追加のセキュリティレイヤーを導入し、ファイルサーバーへのアクセス制御をさらに強化しています。
ユーザーは、PowerShell を使用して SMB over QUIC の設定を行うことができます。さらに、SMB over QUIC のリスニングポートを指定できる機能も用意されており、より柔軟なカスタマイズが可能です。
Visuality Systems の SMB over QUIC ソリューション
Visuality Systemsは、接続性とセキュリティの強化に取り組む中で、Microsoftとの戦略的パートナーシップを通じてその取り組みをさらに加速させてきました。その成果として、当社のSMBプロトコルソリューション YNQ および jNQの機能が大きく強化されています。YNQとjNQは、組み込み機器、ストレージシステム、Java環境において高い効率性を発揮するSMBソフトウェアライブラリであり、QUICの導入によってVPN接続を必要とせずに接続性能を大幅に向上させることが可能です。対応プラットフォームも幅広く、Linux、Android、iOSなど複数のOSで動作します。SMB over QUIC の実装も、QUICトランスポートをプラグイン形式のアドオンを追加するだけで簡単に行うことが可能です。
Visuality Systems の製品ラインナップには、QUIC File Managerもあります。これはAndroid上で唯一の SMB over QUIC 対応ファイルマネージャーアプリケーションです。この独自のアプリは、SMB over QUIC の利点を最大限に活用し、Androidデバイスから直接、安全かつシームレスなファイル共有を実現します。
よりセキュアなWindows環境に向けて
この重要な変化は、WindowsおよびWindows Serverのセキュリティを強化するための、より大きな取り組みの一環です。Microsoftは、セキュリティ機能の継続的な強化を通じて、複雑化する脅威環境に対応するためのツールをIT管理者や組織に提供することに注力しています。
組織がネットワークのセキュリティ強化と柔軟性の向上を追求する中で、すべてのWindows Server EditionでSMB over QUICが利用可能になったことは、その実現に向けた重要なステップといえるでしょう。
Raphael Barki, Head of Marketing, Visuality Systems