私が若い時、カメラはカメラだった。そう、デジタルデバイスではない。その頃、カメラについて「コネクティビティ(接続のしやすさ/良し悪し)」と言えば、撮影済みのフィルムが光に当たらないように気にしながら、空港の荷物検査でX線を回避し、一番いい写真屋を選んで現像にうまく持っていけるかを意味していた。

こういった過程では、一切のデジタルな知見は必要なかった。むしろ、撮る側の人間の知性が必要とされた。プロでなければ、今となっては面倒で義務的なレンズ口径などを考えて、最適な露出を選んだことを思い出す先輩方もいるかもしれない。今日のこの素晴らしいデジタル世界では、何をやるにも簡単に見える。私の二歳の孫娘が写真を撮ろうとする時など正にそうだ。しかし、カメラのコネクティビティに関しては、この簡易さが逆に困難となる。

カメラからメモリーカードを抜いてパソコンに差し込み、写真データを保存する。いつもやっていることだが、これをもっと簡単にすることはできないだろうか?いや、普通のカメラではなくて、例えばPOV(Point Of View)カメラはどうだろう?防水カメラは?アクションカメラは?この種のカメラでメモリーカードを抜く時には注意が必要だ。カードも乾かさなければいけない。言うまでもないが、手のひらサイズのパソコンやタブレットには、SDカードのスロットすらない。産業用カメラや監視カメラでは、問題はさらに複雑になる。特にストレージのないモデルでは。

ここで、「コネクティビティ」が役に立つ。カメラとの接続では、USBを使うのが実際に最も簡単な方法だ。ここでカメラデータの保存に必要なのは、パソコンとUSBケーブルと適当なコネクタ。ちょっと待てよ…、イタリアに行くのにUSBケーブルをカバンに入れ忘れたって?ペルージャのどこかで一日過ごした後に、パソコンを持ってこなかったことを後悔しなかったかい?USB接続も万能薬ではなさそうだ。

クラウド、クラウド、どこもかしこも今はクラウドだ。最近は何て曇り空が多いんだろう!DropBox、AWS、iCloud、どんなクラウドを使うにしても、必要なのは登録して同期するだけ。あとはそのクラウドが全部やってくれる。多要素認証とデータの暗号化のおかげで、クラウドでは高度なセキュリティが担保されている。では、iCloudにお気に入りのカメラを接続できるだろうか?残念ながらできない。「クラウドウェアの多様性」と、「コネクティビティのスタンダード」がここでぶつかる。それぞれのクラウドサービスは異なった専用プロトコルセットを使用しているので、クライアント側のパソコンに別のソフトをインストールする必要がある。

皆さんのパソコンには、何十個ものクラウドアプリが入っているかもしれないが、カメラには入っていない。例えば私の愛用のカメラは、そのメーカーのクラウドにしか接続できない。このクラウドに登録しようとすると、名前、メールアドレス、電話番号までも、二者間の認証情報として聞かれる。たとえメーカーが有名で、信頼できるブランドだったとしても、気分の良いものではない。自分の個人情報が他のデーターベースに保管され、いつでもハックされるかもしれないからだ。

だから私は、自分の写真はできれば自分のホームサーバーに保存したい。そんなことができるのか?

ほとんどのカメラでは簡単ではないが、良い知らせもある。ちょっといいカメラは、PTP(Picture Transfer Protocol)というプロトコルに対応している。いいね!

Microsoftは、Windows XPからPTPドライバーをサポートしている。Macや一部のLinuxもそうだ。いいじゃないか!!

いや、そうでもない…。PTPドライバーがあれば、PTPサーバーまたはPTPクライアントがもれなくついてくる、というわけではない。そのPTP接続を使うには、PTP対応のアプリを立ち上げなければならない。PTP対応のソフトウェアは市場にいくらでもある。ほとんどが無償で、そのカメラメーカーから提供されているが、もちろんそのメーカーの製品しかサポートしていない。私が以前、自分のカメラでPTP接続の恩恵を受けようとした時、そのカメラメーカーのソフトウェアをダウンロードし、メールアドレスや電話番号を登録(また!)しなければならなかった。別のパソコンなら、また同じプロセスを繰り返さなければならない。

しかし、PTPにはセキュリティ対策の不備という欠点がある。セキュリティソリューション大手のCheck Point社が調査した結果、深刻なセキュリティの脆弱性が大した苦労もなく見つかったという。この調査では、攻撃者がカメラをハックして、マルウェアを感染させる過程をシミュ―レーションしている。大切なカメラと写真ファイルが、身代金と引き換えにされる。PTPはスタンダードなプロトコルとして、様々なブランドのカメラに組み込まれているが、USB経由かWiFi経由かにかかわらず、認証機能のないリスクの高いプロトコルだ。

このようなリスクを回避できる接続方法はないのだろうか?

実はある。SMBと呼ばれるネットワークプロトコルだ。SMBは「Server Message Block」を意味している。「Small Medium Business」でも「Super Mario Brothers」でもない。(誰か覚えてる人いる?)

この謙虚なプロトコルのことを知っているのは、世界でもほんの一握りだろう。しかし、何十万もの人がこのプロトコルを知らない内に使っている。そう、奥さんのパソコンに自分のノートPCからアクセスして子供の写真を見る時、自宅のホームネットワークでそれを可能にしているのがこのSMBだ。SMBプロトコルは汎用的で、実際にどこででも使える。WindowsパソコンもMacも、ほとんどのLinuxも、何か別のソフトをダウンロードしてインストールするなど追加的なステップを経ることなく、すべてがSMBに対応している。またAppleは最近、iOSでSMBクライアントをサポートすることを発表した。Androidのスマートフォンでは、少なくとも今のところは商用のアドオンでのみ可能だ。スタンダードになるということは、あらゆるコンピューターと、それが何であろうと、何かをインストールしなくても接続できるということだ。SMBの観点からいえば、どんなデバイスでもクライアントまたはサーバーの役割を果たすことができる。クライアントはデータ転送の前にサーバーから認証を受けなければならないので、SMBは暗号化機能に加え、署名や他の包括的な仕組みで、完全ではないとしても、非常に高いセキュリティを担保している。

希望が持てるだろう?では、SMBはカメラに使えるのだろうか?答えはYESだ。さらにいうなら、SMBはカメラ上でもう使われている。私の知るかぎり、大手カメラメーカーの一社はすでにSMBを画像データのバックアップ用に使っている。このオプションは真にシームレスなコネクティビティを提供している。バックアップ機能はSMBクラアントのカメラの使用例だが、少なくとも今のところは、SMBサーバーの使用例はまだなかったと思う。

この話は出来過ぎているように聞こえるだろうか?実はSMBにも欠点はある。スタンダードになるということは、メリットだけではなく、ある一定のデメリットもある。それは、SMBはカメラ専用に搭載するには汎用的過ぎるということだ。カメラ専用のPTPと、汎用的なSMBを以下に比較してみた。

 PTPSMB
セキュリティ 無し 非常に高い
カメラのコントロール機能 撮影、アップデート等  そのままでは無し
転送スピード 低-中
暗号機能 無し 有り

 

こうして比較してみると、その結果にがっかりするかもしれない。両者とも完全なソリューションではないように見える。SMBはカメラで使うのにあるべき機能がいくつか欠けている。一方でPTPは、セキュリティ対策で妥協せざるを得ない。今日のサイバー攻撃は、ワシントン州の雨と同じくらい日常茶飯事なので、PTPの使用を考える時、私にとってこのセキュリティ対策の不備は最初の疑問点だ。PTPと違って、SMBはそのような攻撃から保護されているといわれている。

よって、事態はそんなに悪くないかもしれない。まず、カメラメーカーはPTPをSMBで補完できる。そうすれば、ユーザーはセキュリティに妥協するか、またはカメラのコントロールに妥協するか、それぞれの使い方によって選択することができる。同時に、これらのプロトコルを拡張する方法もいくつか考えられる。PTPにユーザー認証や暗号化機能をどうやって追加するかはわからないので、SMBの条件を改善する方法を考えてみよう。上の比較テーブルで「そのままでは無し」と書いたのは、SMBには明示的なカメラコントロールの機能はない、という意味だ。簡単に使える方法で、何とかこれを追加することはできないだろうか?

良く知られているのは、SMB上にあるRPC (Remote Procedure Call) の仕組みを使う、という方法だ。様々なRPCのパイプ(ここで「パイプ」とは、コントロールのまとまりを意味する)は、SMBをトランスポートとして使い、多くのコントロールを色々な目的のために実装している。これは簡単にできるのだろうか?いや、RPCを使うには、それぞれのサーバー側のソフトウェアを開発する必要がある。よってRPCを使うことは今はやめて、別のことを考えよう。

私の同僚が、簡単で手軽なSMBだけでできるコントロールの手法について提案してきた。サーバー側に「スマートな」ファイルがあると想像してみよう。そのようなファイルが作成されるとき、サーバー側はある一定のアクションをとらなければならない。このアクションをとるには、カメラはSMBサーバーとして機能しなければならない。例えば写真を撮る時、カメラのストレージにある任意のフォルダーに新しいファイルが作成される。カメラのSMBサーバーは、このファイル作成の際にシャッターを切り、撮影されたイメージをこの新しいファイルの中におく。この段階で、クライアントマシンからは、すでにこのファイルを見ることができる。また、「ファインダーを覗く」という行為もSMBを通して可能だ。これはもう少し複雑だが、SMBのいわゆる「Change Notify」という機能で実現できる。完全なカメラコントロール機能を提供するために、SMBにはこういった拡張ができる。

このように、SMBのコネクティビティはカメラ業界にとって大いに希望が持てるものだが、これを実現するためには、カメラメーカーは複雑なSMBのコネクティビティを開発する必要がある。SMBでのバックアップ機能は最初の一歩にすぎない。本当のチャレンジは、独自製品の開発に皆が再び傾かないように、業界標準を作ることだ。こんなことができるのだろうか?

ここまで読んでいただいた皆さんの中には、なぜ、カメラのコネクティビティについてこんなに騒いでいるんだと、疑問に思う人もいるかもしれない。そこまで重要なことなんだろうかと。今のモバイルデバイスにはカメラ機能が付いていて、カメラがなくても何でも撮れるじゃないかと。

では、とりあえずカメラのことは忘れてほしい。ホームカメラもスキップしてほしい。産業用カメラや、プロ用のカメラ、アクションカメラも無視してほしい。私はカメラについてはプロとは程遠いが、いま手元にあるこの便利なプラスチックのかたまりの感触が好きなんだ。このパワフルなフラッシュや、他の多くの素敵な機能が大好きなんだ。

今、この30~50倍ズームのできるカメラで遊んでいるが、このカメラで撮った月食の写真を見てほしい。スマートフォンでこんな写真が撮れるだろうか?

    

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